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トルコ中央銀行は23日の金融政策決定会合で、通貨トルコリラの安定とインフレ抑制のため、主要政策金利である1週間物レポ金利を高水準にある50%に据え置くことを決めた。市場の予想通りだった。
中銀はエルカン前総裁の就任後初めて開かれた23年6月会合で、2年3カ月ぶりに利上げに転換。利上げサイクルは24年1月まで8会合連続で実施され、金利水準は計36.5ポイント上昇、18-19年のピーク(24%)を大幅に上回り、過去最高を更新したことから、2月に金利を据え置いた。3月会合で予想に反し、5ポイントの大幅利上げを決めたが、4月会合で据え置きに戻った。これで据え置きは4会合連続。
中銀は会合後に発表した声明文で、金利据え置きを決めたことについて、「最新のデータによると、国内需要が依然、インフレ水準にあり、サービスインフレの高止まりに加え、インフレ期待や地政学的リスク、食品価格がインフレ圧力を維持している」とした上で、「金融引き締めが信用状況と国内需要に与える影響を注意深く監視しており、金融引き締めの金融政策の影響が景気とインフレに及んでくるまでのタイムラグ(時間差)を考慮、委員会は政策金利を据え置くことを決めた」としている
今後の金融政策については、前回会合時と同様、「毎月のインフレ率が大幅かつ持続的に低下し、インフレ期待が予測範囲に収束するまで、金融引き締めスタンスが維持される」とし、当分の間、金利を高水準に据え置く方針を確認した。ただ、「インフレ率が大幅かつ持続的に悪化することが予想される場合、金融政策スタンスは引き締められる」とし、追加利上げの選択肢を残している。
インフレ見通しについては、中銀は前回会合時と同様、「インフレ率は6月に顕著に低下したが、7月は管理価格(政府が法律で決める物価)や未加工食品の供給不足などの要因で一時的に上昇する」と、警戒感を示した。ただ、「インフレ率のコア指数の上昇は限定的となり、需要が依然としてインフレ水準にあるものの、引き続き減速している」としている。
市場では、6月のインフレ率は前年比71.60%上昇と、5月の同75.45%上昇を下回り、8カ月ぶりに伸びが鈍化、市場予想(72.6%上昇)も下回ったが、中銀は「7月のインフレ率が上昇する」と警告したことから、中銀は利下げ開始を急がないと見ている。市場では7月のインフレ率は前月比4.0%上昇と、6月の1.64%上昇から伸びが加速すると予想している。
市場は、利下げ開始時期について、早ければ11月か12月で、一部では12月までに計2回の利下げを予想している。
また、中銀は前回会合で、「トルコリラ建て金融資産に対する強い内需や外需に起因する過剰流動性を不胎化(吸収)する」としたが、今回の会合でも「流動性状況は注意深く監視され、不胎化は必要に応じてツールセットを充実させ、効果的に実施する」とし、金利据え置きが長期化する一方で、その間のインフレ抑制のため、マクロプルーデンスな政策に移る方針を示している。
市場では、中銀は今後、マクロプルーデンスな政策としては市中銀行が中銀に預ける準備預金の法定準備率(SRR)引き上げや財政均衡(歳出削減)などの金融引き締め措置を取る可能性があると見ている。最近、外国人投資家はトルコ中銀の金利据え置きによる金利高の維持やインフレ抑制を受け、トルコ国債の購入を強めていることが背景。
ただ、市場の一部では、中銀が外貨準備の減少を補うため、外貨購入を続ければ、トルコリラの過剰流動性が高まることが予想されるため、政策金利のレンジの下限を示す翌日物借り入れ金利を2%ポイント引き上げ、49%とする可能性があると見ている。
次回の金融政策決定会合は8月20日に開かれる予定。
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