(ブルームバーグ): 日本銀行が来週開く金融政策決定会合では、足元で弱めの個人消費が追加利上げに踏み切るかどうかの判断を複雑化させている。複数の関係者への取材で分かった。
関係者によると、一部の日銀当局者は、個人消費が想定通りに回復していくかを今後のデータや情報などで確認したいとし、今回会合では利上げ見送りが妥当な選択肢と考えている。日銀が利上げを急いでいると受け取られることへの警戒感もあるという。
同時に、足元のインフレ動向が日銀のシナリオに沿って推移していることから、今会合での利上げに前向きな当局者もいると関係者は指摘。政策金利が0-0.1%という極めて低い水準にある中で、先行き不透明感の強さを踏まえれば、機会を逃すリスクを意識する声もある。
日銀は30、31日の会合での利上げの是非について、経済・物価情勢や市場動向を会合直前まで見極めた上で、最終的に判断する。
追加利上げの思惑を高めていた円安は、今月3日に付けた1ドル=162円付近から一時155円台に上昇するなど足元は円高方向に振れている。米国のインフレ指標の鈍化などで米連邦準備制度理事会(FRB)が9月にも利下げに踏み切るとの観測が強まっており、為替相場を巡る環境にも変化が見られつつある。
国債減額計画
今会合で決定する今後1-2年程度の国債買い入れの減額計画について、日銀は市場にサプライズを与えるつもりはないと関係者は指摘する。
日銀は現在、月間6兆円程度の国債買い入れを続けており、植田和男総裁は減額方針を決めた6月会合後の記者会見で、「 減額する以上、相応の規模となる」と明言した。ブルームバーグが6月会合後にエコノミスト43人を対象に実施した調査では、減額計画と同時に追加利上げが実施されるとの予想は33%だった。
関係者によると、一部の日銀当局者は、市場参加者との会合などを踏まえて日銀の国債買い入れの減額姿勢に対する市場の理解が深まったと受け止めている。当初は減額は限定的との見方もあったが、現在は2年後に月間3兆円程度に縮小されるとの見方が市場の一つの目安になっていることを、日銀も認識しているという。
また、声明文に明記されるかどうかにかかわらず、長期金利が急激に上昇した場合、日銀が引き続き市場に介入することが見込まれると関係者は指摘した。
関係者によると、会合で議論する新たな経済・物価情勢の展望(展望リポート)では、見通し期間の最終年度に当たる2026年度の消費者物価は、目標の2%付近で推移するとの見方が維持される公算が大きい。今月発表された1-3月期の国内総生産(GDP)改定値の下方修正を主な理由に、24年度の実質成長率見通しを従来の0.8%から0.5%程度に引き下げる見通しだ。
GDP統計では、個人消費は1-3月期まで4四半期連続で前期に比べ減少している。