■米長期金利の反発を受けてドルは下げ渋る
今週のドル・円は下げ渋った。河野太郎デジタル相は7月17日にブルームバーグテレビジョンに出演し、急激な円安がもたらす国内物価への影響などの問題を指摘し、エネルギーや食料品のコストを引き下げるために政策金利を引き上げるよう日本銀行に求めたことから、リスク回避的な米ドル売り・円買いが活発となった。一時155円38銭まで米ドル安円高が進行したが、欧州中央銀行(ECB)による追加利下げは年内1回にとどまるとの見方や米長期金利の反発を受けてリスク回避的な円買いは縮小。円安がある程度是正されたことによって日本銀行による7月追加利上げ観測は後退したこともドル売り・円買いを抑制した。
19日のニューヨーク外為市場でドル・円は一時157円70銭まで戻した。世界各国で大規模なシステム障害が発生し、金融機関などの一部業務にも影響が及んだことから、質への逃避のドル買いがを観測された。米国株式は下落したが長期金利は上昇したこともドル買いにつながった。ドル・円は157円48銭でこの週の取引を終えた。ドル・円の取引レンジ:155円38銭-158円86銭。
【来週の見通し】
■伸び悩みか、米インフレ鈍化と日銀の利上げ観測で
来週のドル・円は伸び悩みか。米インフレ指標は鈍化しつつあり、9月利下げの可能性は高いことから、リスク回避的なドル売り・円買いが大幅に縮小する可能性は低いとみられる。日本銀行による7月追加利上げ観測は後退したものの、ドル・円相場に大きな動きがない場合、金融政策修正の思惑が再び強まる可能性があることもドルの上昇を抑える一因となりそうだ。7月26日発表予定の6月コアPCE価格指数が注目され、前回よりもさらに低下すれば9月利下げの可能性は高まり、金利安・ドル安に振れやすい。
パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は議会証言やメディアのインタビューで、従来通り政策金利の引き下げにはやや慎重な姿勢を堅持。ただ、金融緩和については前向きな見解とみられ、年内2回の利下げは織り込まれつつある。一方、河野デジタル相は円安を食い止めるため、日銀の利上げの必要性を主張。日本の消費者物価指数(CPI)は加速しており、7月30-31日の金融政策決定会合に向け追加利上げ観測が高まれば、米ドル売り・円買いがやや強まる可能性は残されている。
【米・4-6月期国内総生産速報値】(7月25日発表予定)
7月25日発表の4-6月期国内総生産(GDP)は前期比年率+1.7%と、1-3月期の+1.4%を上回る見通し。想定通り改善すれば早期利下げを見込んだドル売りは一服しよう。
【米・6月コアPCE価格指数】(7月26日発表予定)
7月26日発表の米6月コアPCE価格指数は前年比+2.6%と、上昇率は5月実績と同水準となる見通し。ただ、市場予想を下回った場合、早期利下げ観測により米金利安・ドル安の展開に。
ドル・円の予想レンジ:155.50円-159.50円