2024年定時株主総会における銀行トップ(社長・頭取)の賛成率を集計した/>
上場企業に求められるガバナンスの水準が高度化する中、株主総会で会社提案に賛同してもらうハードルも上がっている。中でも銀行は低迷するROE(株主資本利益率)や多額の政策保有株式などがネックとなり、会社の顔である代表者の人事案に反対票が集まりやすい。
銀行のトップは今年の株主総会において、投資家からどれほどの支持を集めたのか――。東洋経済は全国の証券取引所に上場する「銀行業」計83社の臨時報告書を基に、2024年定時株主総会における経営トップ(社長・頭取)の賛成率を集計し、ワーストランキングを作成した。
そのうち経営トップの取締役任期が2年(2年目)の銀行を除く74社で賛成率が示されており、実に7割に当たる53社で、昨年より賛成率が下落していた。
数値が最も低かったのは、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)の亀澤宏規社長。賛成率は64.58%で、昨年から11.36ポイントの下落となった。
同社をめぐっては株主総会直前の6月24日、傘下の銀行や証券会社が金融商品取引法違反によって金融庁から行政処分を受けた。法令違反の責任を問うべく、一部の機関投資家が反対票を入れたようだ。
一方、行政処分が下る前にあらかじめ議決権を行使していた機関投資家も多く、コンプライアンスの不備だけが賛成率下落の要因とは言いきれない面もある。連結純資産の2割を超える政策保有株式の残高や、株主提案を受けた気候変動対策など、複合的な要因が向かい風になった可能性がある。
2位は三井住友トラスト・ホールディングスの高倉透社長。賛成率は70.04%と、こちらも昨年から13ポイントも下落した。下落の要因は、やはり政策保有株式と見られる。同社の保有残高は連結純資産の5割超と、銀行の中でも目立って高い。
■株主構成もカギ
賛成率は株主構成にも左右される。一般に、ガバナンスに厳しい外国人株主の割合が高ければ賛成率は低くなりやすいのに対し、会社側に好意的とされる個人投資家や取引先が多いほど賛成率は高まる。
都市銀行が60~70%台に沈む一方、規模の小さい地方銀行で90%台が目立つのは、株主構成の差も一因にありそうだ。監視役たる株主が不在の中では、賛成率が高い水準にあっても経営手腕が優れているとは言い切れない。