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2024年6月末時点で過去1年間のトータルリターンでランキングする(レバレッジ型、通貨選択型を除く)と、トップは「野村 世界業種別投資シリーズ(半導体)」、次いで、「(オーロラII)トルコF」、そして、「HSBC インド・インフラ株式オープン」、「トルコ株式オープン 『愛称:メルハバ』」になる。過去3年でも、この4銘柄がトップ4を占めることに変わりはない。「半導体株」と「トルコ株」と「インド・インフラ株」が、過去3年間では際立って大きなリターンにつながった。それぞれが、投資対象を特定の資産に限定して投資するタイプのファンドだ。新NISAが始まって以来、「全世界株式(オール・カントリー)」などインデックスファンドを使った積み立て投資が大きなブームになっているが、そのような「コア」になる投資に加えて、「サテライト」として「半導体株」などの特定資産に特化したファンドを加えることで資産全体のリターンを高めることも考えたい。
コア投資の代表格になっている「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」の過去1年間のトータルリターンは34.39%だ。過去の株式投資の運用実績と比較しても非常に高いリターンを残しているといえる。日米欧の代表的な株価指数が今年に入って史上最高値を更新するなど、世界的に株価が上伸する環境となっており、それらに広く分散投資している同ファンドのパフォーマンスを押し上げることになった。「eMAXIS Slim国内株式(日経平均)」は21.28%、「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」は40.26%という成績であり、米国株式をけん引役として世界の株価が上昇している。
ところが、パフォーマンス上位の銘柄群は、「野村 世界業種別投資シリーズ(半導体)」が103.08%、「(オーロラII)トルコF」が90.38%、「HSBC インド・インフラ株式オープン」は76.00%、「トルコ株式オープン 『愛称:メルハバ』」は74.29%と「オルカン」に倍するリターンを記録している。投資対象を特定すれば、「オルカン」を大きく上回るリターンが得られるわけではないが、「生成AIの登場によって急速に需要が拡大する見込みの半導体」、「異常な金融政策を正常化することによって信頼回復が進むトルコ」、「世界屈指の経済成長を実現しているインド」など、それぞれに納得できる株高の背景があることは確かだ。多くの投資家を納得させる材料が備わっていれば、市場全体を大きくアウトパフォームできるという点は、「サテライト」投資を考える際のポイントの1つといえる。
もっとも、コアの投資で年間30%を超えるようなリターンであれば、あえて「サテライト」を求める必要も感じられないかもしれない。実際に、今年に入ってからの「オルカン」の人気ぶりは、「投資は『オルカン』1本で十分」という勢いを感じさせる。しかし、「オルカン」は、「株式」のみに投資するファンドだ。「株式」に匹敵する投資対象である「債券」には投資していない。「オルカン」のみに投資している場合、「株式」の投資環境が大幅に悪化した場合に、大きな痛手を被る可能性がある。リーマンショック(世界金融危機、2008年)後の過去15年ほどは、世界的な低金利政策の影響で米国株を中心に株式に追い風といえる市場環境が続いてきた。
「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」が1年間で約35%も上昇するような環境は、かなり「行き過ぎ」の印象がある。ましてや、「野村 世界業種別投資シリーズ(半導体)」の1年で103.08%などは、スピード違反で逮捕されるレベルといえよう。ただ、投資で資産形成を行う過程においては、「投資環境が良い時にはできるだけ高いリターンを得ておくこと」というのは、成功のための重要なカギだ。「半導体株」、「トルコ株」、「インド・インフラ株」は、過去3年で年率40%を超える高いリターンを記録している。特別な目利きでなくとも、ある程度市場を見ている投資家であれば気が付くことができる高パフォーマンス銘柄だった。知っていながら見過ごしていたというのは、あまりにももったいない結果だった。投資に踏み出したからには、世界経済を見渡して、どのような投資態度が必要かを常に考えるようにしたい。
今、投資対象を「株式」だけに絞っていてよいのだろうかということを考えることも重要だ。世界的な低金利が世界的なインフレをもたらし、欧米をはじめ主要国は急速な利上げを行ってインフレの抑制を図った。おおむねインフレは収まりつつあるが、利上げによって急減速するとみられていた世界経済は案外としっかりしている。不景気に落ち込まないことが株高を支えてるが、この状態が今後も継続するのだろうか? 変化や変調は、変わってしまわないとわからないものだが、変化に備えておくことはできる。それが「分散投資」だ。「株式」に傾斜して、それが良い成績につながった期間がすでに15年間以上も続いている。改めて、「分散投資」について検討したい。(イメージ写真提供:123RF)