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人となり表れる「腕時計」自分らしさをさりげなく表現するコツ、ブランドやモデルの哲学が選ぶときのポイント

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2024-07-07 08:02

スイス時計協会の統計データによると、2023年のスイス時計の輸出額は、過去最高となる260億スイスフラン(約4兆400...

  ボリューム感のある現代的なデザインを持つグランドセイコーのスプリングドライブモデル/>

  スイス時計協会の統計データによると、2023年のスイス時計の輸出額は、過去最高となる260億スイスフラン(約4兆4000億円)を記録したという。

  2024年はスイスフラン高などもあって輸出量は減少傾向ではあるものの、2000年の輸出額が102億スイスフランであったことを考えると、23年間で2.5倍も市場が拡大したということになる。

  とくに躍進が目覚ましかったのが中国市場で、2000年はわずか0.45億スイスフランだった市場が、2023年は27億スイスフランへと約60倍も市場が拡大した。

  もちろん、これは極端な例だが、すでに成熟していたアメリカ市場や日本市場さえも、この23年間でスイス時計の輸入額は約2倍にもなっている。

  これはとても興味深い現象だ。2000年というのは、先進国において携帯電話の普及率が50%を超えた年でもある。手元で簡単に時刻がわかる電子デバイスを持ち歩く時代になって以降、急激に時計が売れるようになったのだ。

  しかも面白いことに、2000年から2023年で輸出額は2.5倍になっているが、本数はほぼ半減している。これは時計の高額化が進んでいるということであり、事実3000スイスフラン(約50万円)以上の時計の輸出本数は、この23年間で約4倍になっている。

  つまり、「時計が売れている」のではなく、「高級時計が売れている」ということなのだ。

  ■携帯電話がもたらした、高級時計の新しい立ち位置

  では、なぜ高級時計が売れるようになったのか? そこには、1983年に誕生したスウォッチとG-SHOCKという2つのメガブランドが大きな影響を与えていると考える。

  【写真】腕時計選びではブランドやモデルの哲学が、自分の哲学に沿うかを必ず見極めたい。ここでは確固たるキャラクターを持つ腕時計3本を紹介

  両ブランドはどちらも、時計を実用品からファッションへと転化させ、世界的規模で強烈なブームをつくった。そして、このファッションとして時計を楽しむユース文化の洗礼を受けた世代(当時の10~20代)が年齢を重ねて可処分所得が増えると、実用品ではなくファッションとして高級時計を選ぶようになったのだ。

  ■高級時計も“一生モノ”ではなくファッションに

  さらに、くしくも携帯電話の普及とともに、高級時計もファッション化を進めた。スイス時計業界の大物経営者であるジャン-クロード・ビバーは、ウブロCEO時代の2006年にダイヤルも針もインデックスも黒くて時刻が見えない「ビッグ・バン オールブラック」を発表。その意味を問われた彼は「今どき、時計で時刻を見る人などいない」と看破。その後もウブロは快進撃を続け、彼の見立てが正しかったことを証明した。

  ユーザーは過去の経験から高級時計であってもファッション性を求め、また時計ブランド側は携帯電話の普及によって“実用品”というくびきから解き放たれたことで、色や素材、デザイン面で創造性を発揮できるようになる。ユーザーとメーカーの思いが一致した結果、高級時計は爆発的に売れるようになったのだ。

  スタイルを表現するファッションであれば、時計を複数所有するのが当然であり、自分らしさを表現しやすいヴィンテージウォッチに熱中する人も増える。周囲が時計に興味をもてば希少な時計を狙う人も増えるので、サザビーズやクリスティーズでも時計のオークションが開催されるようになり、2次マーケットも活況化する。

  “一生モノ”を求めた前の世代よりも、現代の愛好家の高級時計との付き合い方は自由度が高く、そして軽やかであるといえるだろう。しかしそれは同時に、時計選びが難しくなったということでもある。

  高級時計=ファッションとなれば、時計を通じて自分というものが明らかになるということでもある。であるならば重視すべきは、自分らしさを表現できることに尽きる。自分自身の内なるものを、時計でさりげなく表現するのだ。

  ■ビジネスパーソンに最適な時計とは?

  自分らしさを表現する時計を選ぶなら、ブランド哲学が明確で、確固たるキャラクターを持っているほうがいいだろう。

  例えば、グランドセイコー。日本が世界に誇る高級時計ブランドであり、ジュネーブで開催される世界最大の高級時計の展示会「Watches and Wonders」に非欧州ブランドとして唯一参加するほど、スイス時計業界からも一目置かれる存在である。

  時計を駆動させるムーブメントの小さなパーツさえも自社製造しているほど品質にこだわりがあり、伝統を強く意識する一方で技術開発にも積極的だ。

  今年25周年を迎えたセイコー独自の「スプリングドライブ」という駆動方式は、巻き上げた動力ゼンマイがほどけようとする力で歯車を回転させて発電し、その電力を使ってIC回路と水晶振動子を動かし、回転する歯車に正しいタイミングでブレーキをかけて正しい時刻を示すというもの。グランドセイコーに搭載するスプリングドライブムーブメント「キャリバー9R」は、仕上げも美しい。

  「Evolution 9 Collection SLGA019」は、ボリューム感のある現代的なデザインを持つスプリングドライブモデル。精密な型打ち技法によってつくられた凹凸のダイヤルは、時計の製造地である長野県塩尻市から近いエリアにある諏訪湖の早朝の風に揺らぐブルーの湖面をイメージしたもの。

  誠実な時計づくりの中にも、美しい美意識を取り入れるのが、最近のグランドセイコーのスタイルだ。

  スイス時計を好むなら、チューダーがいいだろう。ロレックス創立者のハンス・ウイルスドルフが、技術と信頼性を生かした新ブランドとして1926年に創業したブランドで、フランス海軍などの軍隊や冒険家たちから愛されてきたタフウォッチを得意とする。

  現代的なスペックを追求しており、「ブラックベイ」では、スイス連邦計量・認定局(METAS)が定める高い精度と1万5000ガウスの耐磁性能に準拠した高性能ムーブメントの「Cal.MT5602-U」を搭載。強い磁気を発するデジタル機器に囲まれた現代のビジネスマンのニーズに沿っている。

  また200m防水のタフなケースやブレスレットなら雨や汗を問題にしないので、高温多湿の日本の夏も快適に乗り切れるだろう。

  ■運命の時計を愛し抜くという価値観も普遍的

  いくらファッション化したとしても、運命の時計を愛し抜き、次の世代へと受け継ぐという価値観もまた普遍的である。ジャガー・ルクルトは、そういった思いに応えるスイスの技巧派ブランドだ。

  創業は1833年。当時から現在まで時計の精度を追求し、長い歴史の中で数多くのムーブメントや機構を開発してきた。その中でもアイコンモデルとなるのが、1931年に誕生した「レベルソ」だ。

  風防を守るために考案された反転式ケースが特徴で、当時流行していたアール・デコ様式のデザインも普遍的な美しさがある。

  ■時計を選ぶことは「自分と向き合う」ということ

  高い技術を駆使し、時計の表と裏に機構を組み込むモデルも人気だが、私のおすすめはケースの裏側がソリッドバックになった「レベルソ・トリビュート・スモールセコンド」。

  ケースバック部分にエングレービングを行うことができ、自分用としてイニシャルなどを彫るのもいいが、十数年使ってから子どもへのメッセージをエングレービングしてもらいプレゼントすることも可能だ。自分との美しい思い出とともに美しい時計を継承する。それも高級時計の楽しみ方の1つである。

  時計がファッションであるなら、何を選んでもその人の自由だ。しかし自分のスタイルを表現するものでもあるのだから、ブランドやモデルの哲学が自分の哲学に沿うかを必ず見極めたい。結局のところ、時計を選ぶということは、自分と向き合うということでもあるのだ。

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