11日に6月の米消費者物価指数(CPI)、12日に同生産者物価指数(PPI)が発表されます。
共に前回は予想を下回る伸びとなり、9月の米利下げ開始期待を強め、年内複数回利下げの期待につながる結果となりました。
前回5月の米CPIは前年比+3.3%と4月の+3.4%を下回り、伸びが鈍化しました。市場予想は+3.4%で横ばいとなっていました。変動の大きい食品とエネルギーを除いたコア指数は前年比+3.4%と4月の+3.6%から伸びが鈍化しました。市場予想の+3.5%を下回る伸びとなりました。前月比は横ばいで4月の+0.3%、市場予想の+0.1%を下回り、コア前月比は+0.2%で4月の+0.3%、市場予想の+0.3%を下回りました。前月比が横ばいとなるのは22カ月ぶり、コアの伸びの低さも2023年10月以来です。
前年比の内訳をみますと、食品は前年比+2.1%と4月から伸びが鈍化。同部門は一時の二けたの伸びから鈍化が続いていましたが、2月、3月、4月と同じ+2.2%となり鈍化傾向が一時停滞も、前回再び鈍化してきました。エネルギーは+3.7%と伸びが強まりました。そのうちガソリンは+2.2%と4月の+1.2%から伸びが強まっています。
弱かったのが自動車で、中古車が-9.3%と前回の-6.9%からさらに伸びが鈍化。2022年11月からのマイナス圏継続でさらに下落率も高まるという厳しい状況です。新車も-0.8%とマイナス圏。こちらは3カ月連続のマイナスです。自動車メーカーによる販売促進などが背景にあります。
エネルギーを除くサービスは+5.3%と4月と同水準。CPI全体の36.2%を占める住居費は+5.4%と小幅ながら伸びが鈍化。ただ依然として高水準です。自動車保険が+20.3%と4月の22.6%から伸びが鈍化も相当に高い水準。6カ月連続の20%超えです。それもあって同項目を含む輸送サービスは+10.5%と3カ月連続の10%超えとなりました。レクリエーションサービスが3.9%まで低下、労働集約的なサービスの価格上昇鈍化は雇用市場の低迷を意識させる結果となっています。
米CPIの翌日に発表された前回5月の米PPIは、前年比+2.2%と市場予想の+2.5%を大きく下回りました。4月は+2.3%(速報時の+2.2%から上方修正)となっており、予想外に伸びが鈍化しています。食品とエネルギーを除いたコアは前年比+2.3%とこちらも市場予想の+2.5%を下回る伸び。4月は+2.5%(速報時+2.4%から上方修正)で、こちらも伸びが鈍化しています。前月比は-0.2%と予想外にマイナス。市場予想は+0.1%、4月は+0.5%となっていました。コア前月比は横ばい。市場予想は+0.3%、4月は+0.5%となっています。
CPIと比べても予想からの乖離が大きく、鈍化が目立ったことで、米物価の鈍化警戒が強く意識されました。ガソリンを中心としたエネルギー価格の低下が影響した形です。
こうした状況を受けて今回の予想です。
6月のCPIは前年比+3.1%と5月からさらに鈍化見込みです。コアCPIは+3.4%と5月と同水準が見込まれています。前月比は+0.1%と小幅ながら強まる見込み、コア前月比は5月と同じ+0.2%予想です。
5月から6月にかけてガソリン小売価格が大きく低下。米エネルギー情報局(EIA)調査による全米全種平均で1ガロン当たり5月の3.725ドルから6月は3.576ドルと、4%の大幅低下となっています。昨年は5月から6月にかけてガソリン価格が小幅上昇していますから、前年比ベースではかなりの低下となる見込みです。
こうした状況が物価の鈍化見込みにつながっています。5日に発表された6月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数自体は予想を上回りましたが、比較元の5月の数字が大幅下方修正されており、微妙な数字。失業率が予想外に悪化したことと合わせ、米雇用市場の鈍化を意識させるものとなりました。そうした中で米CPIの鈍化がはっきりとみられると、ドル売りにつながる可能性があります。
CPIの翌日に発表される6月のPPIの予想は前年比+2.2%、コア前年比+2.5%と共に伸びが強まる見込みです。前月比は+0.1%、コア前月比+0.2%とこちらも伸びが強まる見込みです。ただガソリン価格の低下が見込まれる中、中間財の価格低下が進む可能性があるだけに、予想ほど伸びない可能性があります。この場合は前日のCPIにもよりますがドル売りとなる可能性があります。