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ポーランド中銀は3日の金融政策委員会で、ディスインフレ(物価上昇率の低下)が続いているものの、インフレ再燃リスクがあるとして、主要政策金利の7日物レファレンス金利を5.75%に据え置くことを決めた。また、中銀はロンバート金利と再割引金利、公定歩合、預金金利もそれぞれ6.25%、5.80%、5.85%、5.25%と、いずれも据え置いた。市場の予想通りだった。
中銀はコロナ禍後のインフレ急加速を受け、21年10月会合で9年5カ月ぶりに利上げに転じ、22年9月会合まで計11会合連続で利上げを継続。利上げ幅が計6.65ポイントに達したことから、翌10月会合で据え置きに転じた。23年7月会合まで10会合連続で据え置いたあと、同9月会合で3年ぶりに利下げに転換、同10月会合でも利下げを決めたが、インフレリスクを警戒して同11月会合で据え置きに転換。これで金利据え置きは9会合連続となる。
中銀は声明文で、依然、高水準にある金利を据え置いたことについて、「景気回復が見られるものの、需要とコスト圧力は比較的低いままであり、経済状況の悪化と海外のインフレ圧力低下により、国内のインフレ圧力が抑制されている」とし、ディスインフレプロセス(インフレ低下基調)が続いているとしたが、前回会合時と同様、「(それでも)国内経済の需要圧力は、公務員給与の上昇などに起因する顕著な賃金上昇により、経済需要が刺激されている」、また、「(インフレ要因である)賃金の伸びが依然、高水準にある」とし、賃金上昇がインフレ再燃リスク要因になっているとし、政策金利を据え置いたとしている。
また、中銀は、「インフレ率は今後数四半期、エネルギー価格の上昇により、物価目標を上回る。エネルギー価格上昇がインフレ期待に与える影響には不確実性があり、中期的に、さらなる財政政策や規制措置、ポーランドの経済回復のペース、労働市場の状況に左右される」としている。市場ではインフレ率は10月に前年比約5.3%上昇でピークに達し、25年半ばにエネルギー価格上昇の影響が薄れるまで高止まりすると予想している。
同国の6月のインフレ率は前年比2.6%上昇と、前月(5月)の同2.5%上昇を上回り、物価目標と一致した3月の2,0%上昇から伸びが加速した。ただ、23年2月の18.4%上昇をピークに低下傾向にある。今回の会合で公表された最新の7月経済予測で、中銀は24年のインフレ率の見通しを3.1-4.3%上昇(前回3月予測は2.8-4.3%上昇)、25年を3.9-6.6%上昇(同2.2-5%上昇)、26年は1.3-4.1%上昇(同1.5-4.3%上昇)と予想、24年と25年の見通しを引き上げた。
また、今後の金融政策について、中銀は、「現在の政策金利水準が中期的に物価目標の達成に寄与すると判断している」とし、当面、金利を据え置く考えを示した。ただ、中銀は前回会合時と同様、「さらなる金融政策の決定はインフレと経済活動の見通しに関する今後の情報に依存する」とした上で、「インフレ率を中期的に物価目標にまで引き下げ、マクロ経済と金融の安定を確保するために必要なあらゆる措置を引き続き講じる」としている。
市場では1-3月期GDP(国内総生産)伸び率が前年比2.0%増と、賃金上昇により、個人消費が成長をけん引、前期の同1.0%増から加速したことや、政府が6月に終了したエネルギー価格の上限設定を延長しない方針を決めたことを受け、中銀はディスインフレプロセスが長続きしないとみて警戒している。アダム・グラピンスキー総裁も賃金の急上昇が利下げを阻む主な懸念材料と指摘、年内利下げを否定している。同国では昨年末の現政権発足以降、公務員給与が20-30%引き上げられ、企業の賃金もここ2年超、ほぼ毎月2ケタペースで上昇している。
次回の会合は8月20日に開かれる予定。
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