7月3日、欧州中央銀行(ECB)の政策担当者の間から、約10年にわたって実施された大規模な債券買い入れ(量的緩和=QE)は効果より弊害が大きかったのではないかとの視点に立ち、改めて検証すべきだとの見方が出ている。昨年3月、独フランクフルトのECB本部の外で撮影(2024年 ロイター/Heiko Becker)/>
Balazs Koranyi Francesco Canepa
[シントラ(ポルトガル) 3日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)の政策担当者の間から、約10年にわたって実施された大規模な債券買い入れ(量的緩和=QE)は効果より弊害が大きかったのではないかとの視点に立ち、改めて検証すべきだとの見方が出ている。複数の関係者がロイターに明かした。
ドラギ前総裁の下でECBが物価低迷に対応する目玉政策として積極的に推進してきたQEを巡り、これまでで最もはっきりした形で内部から異論が出てきたとも受け取れる動きだ。
QEは、世界金融危機の際に米連邦準備理事会(FRB)が主要中銀の中でいち早く採用し、景気刺激とデフレ突入リスクの回避を図った。ECBもコロナ禍前までの10年近くで国債を大部分とするおよそ5兆ユーロの債券を購入し、同時に銀行向け低利融資を実行した。
しかしECBの6人の政策担当者は、もう一度QEについて議論し、QEを超低金利局面で求められる「特に強力かつ持続的な」行動としているECBの戦略規定をできれば修正したいと述べた。
こうした議論は、間もなく始動して数年内にまとめられるECBの全般的な戦略の見直し作業において行われる見通しだ。
関係者の一人は「われわれは何兆ユーロもの資産を買い入れた挙げ句、物価上昇率を目標に戻せなかった。この刺激策を打ち切って数年を経過した今も、3兆ユーロ余りの過剰流動性を抱え、何年にもわたって政策対応の足かせになっている」と指摘した。
QEに関しては、国際決済銀行(BIS)が最近、その副作用が導入時点で完全に把握されていなかったなどとの見解を表明。ECB関係者の一人は「われわれが幾つかの政策手段の使い方を再評価しなければならないという意味で、彼ら(の指摘)は正しいと思う」と語った。
複数の関係者の主張では、中銀は物価上昇率が目標よりも多少下振れするのを容認したままの方が、QEを実施するよりコストが小さいので、そうすることもできたはずだという。
ただECB内には、当時の入手可能な情報に基づく限り、QEは適切な政策対応だったし、物価上昇率が低すぎる状態を長期間放置すれば、経済は打撃を受けたはずだとの声も少なくない。
ECBの事務方幹部がまとめた論文でも、QEとマイナス金利維持の約束という組み合わせは成長と物価を押し上げ、失業率をより低い水準に保ち続けたとしている。
これに対して6人の政策担当者はいずれもロイターに、パンデミックなどのショック発生時には確かに債券買い入れは正しい手段だが、その際の規模で長期間行うべきではなく、特に経済が構造的な問題を抱えている場合は、中銀でなく政府が動かなければならないと強調した。