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中学受験で“深海魚”になる子がハマる「魔の75日」の落とし穴…東大・京大計100人合格の超進学校が教える回避術とは?

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2024-06-29 16:02

東大、京大合格者数で全国トップレベルの進学実績を誇る奈良県の私立中高一貫校、西大和学園。しかし、実は勉強だけでなく、さまざまな行事や海外留学ホームステイなど充実したカリキュラムが組まれているのだ。未来の国際人を多数生み出す“西大和学園イズム”を学園の会長である著者が語る。本稿は、田野瀬良太郎『なぜ田舎の無名高校が東大、京大合格トップ進学校になれたのか 西大和学園の躍進』(主婦の友社)の一部を抜粋・編集したものです。...

  東大、京大合格者数で全国トップレベルの進学実績を誇る奈良県の私立中高一貫校、西大和学園。最新の実績では東大・京大合格者が計100人となった。しかし、実は勉強だけでなく、さまざまな行事や海外留学ホームステイなど充実したカリキュラムが組まれているのだ。未来の国際人を多数生み出す“西大和学園イズム”を学園の会長である著者が語る。本稿は、田野瀬良太郎『なぜ田舎の無名高校が東大、京大合格トップ進学校になれたのか 西大和学園の躍進』(主婦の友社)の一部を抜粋・編集したものです。

  ● 生え抜きの6期生が見せた 目覚ましい合格結果

  5期生まで右肩上がりで進学実績を伸ばしてきた西大和学園が一気にステップアップしたのが、1994年度卒業生である6期生のときです。

  前年の183名から国公立合格者は200名の大台に乗り、207名に。そのうち、東大6名、京大17名と最難関大学2校の合格者を飛躍的に伸ばしました。東大は4名、京大は15名が現役合格者です。

  この結果により、周囲の西大和学園に対する評価の流れは一変しました。奈良県内のほか、大阪、京都などの名門私立を狙う子どもたちや親御さんが、選択肢のひとつとして「西大和学園」に着目してくれるようになったのも、このころからです。

  6期生は、西大和学園中学校初年度の生徒でもあります。6年間、西大和学園の生活指導、進路指導を受けた、生え抜き第1号が彼らです。手探りで始めた中高一貫教育でしたが、彼らの出した結果は、教員たちにとっても「自分たちの方針は間違っていなかった」と、たしかな自信につながりました。

  ここからは、少し中高一貫教育の中学校に照準をあててお話ししたいと思います。

  中学1期生入学は1988年4月のことです。

  男子のみ90名募集のところ、受験者数は532名。あえて定員数は満たさず、72名を新入生に迎え入れました。1期生の進学実績が呼び水となり、勉強の習慣づけができている、キラキラとした能力が垣間見える子たちが入ってきてくれました。

  初期の高校生たちには、3年間という時間の制約があったり、根気強い復習の繰り返しが必要であったりしたため、詰め込み式の授業を余儀なくされましたが、中学1年生の彼らには6年間あります。中高一貫教育のメリットを最大限に生かせるよう、視察した灘中学校やラ・サール中学校などの教育内容で、いいものがあればどんどん取り入れながら、カリキュラムをつくっていきました。

  ● 受験失敗のショックは もりだくさんの行事で払拭

  中学1年の授業カリキュラムでは、全学科を通して「時間を割いて基礎学力を充実させる」ということに力点を置きました。この段階で基礎学力を定着させるか、させないかで、高校3年間の勉強の進度と深度が変わってきます。

  また、中学時代には知的好奇心をくすぐるような行事を増やしていきました。学問に対して興味を湧かせることや、自分でも気づかなかった自身の個性、適性を発見してもらうことがおもな目的です。

  でも、実はこうした目的は、成果が出たあとで分かったことです。中学校開校当初は、「まず、走ってみる。走りながら取捨選択して、子どもの実践を通して理論を考える」というのが私以下、当時の教員たちのやり方でした。こうした決断の速さやフットワークのよさは、令和の時代を迎えた今も西大和学園の教員たちに引き継がれています。

  中学に入学したての6期生が、まず参加する行事が4月の「オリエンテーション合宿」です。奈良県宇陀郡曽爾村にある国立曽爾青少年自然の家にひと晩泊まって、クラスメートや先生たちの輪に溶け込みます。

  8月には奈良県南部の霊峰・大峰山へ、3泊4日の登山。明けて3月には長野県志賀高原へ5泊6日のスキー合宿。その間にも小豆島での理科実験合宿、高校生と合同の文化祭や体育祭など、大忙しです。

  特に宿泊行事を多くしたのは、6年後の大学受験に向けてじっくり絆をつくり、団結力を高めていく意味もあります。でも、行事に取り組む子どもたちを観察していると、ほかにもたくさんの効果があることが分かりました。

  ひとつは、中学入試でのわだかまりをリセットできるということです。

  西大和学園中学校へ入学してきた生徒のなかには、目指していた難関私立中学の受験に失敗した子もいます。

  「もう一度試験をすれば合格者の3分の1は入れ替わる」とも言われる中学入試。高校入試と比べても運・不運に左右されることが多いので、一度の失敗を長く引きずる子がたくさんいます。でも、あちらへこちらへと次々に合宿していると、それぞれの環境に慣れようと必死になって、いつの間にか鬱々とした気持ちがリセットされるのです。

  また、中学入学当初の子どもたちは、どうしても通っていた塾のクラスによって派閥に分かれてしまいがちです。それが、合宿で一緒に寝泊まりしながらワイワイやっているうちに、「派閥なんてあったっけ?」というくらい、しがらみがほどけてしまいます。

  ● 中学受験後に気をつけるべき “魔の75日間”とは?

  中学受験を引きずるのは、何も受験に失敗した子だけではありません。新入生のなかにも、勉強に対して前向きになれない、なかなかやる気が出ない、“燃え尽き症候群”のような状態になる生徒が少なからずいるのです。その原因は、合格発表から入学式までの2カ月半の過ごし方にあります。

  いわゆる“魔の75日間”です。

  長期間にわたる受験勉強や精神的なプレッシャーから、ようやく解放された子どもたちは、合格発表直後からさっそく、我慢していたゲームに思う存分興じるようになります。受験期には厳しかった親御さんも「頑張って合格したのだから、この期間くらいは」と、うるさく言わないので、子どもは正々堂々ゲーム三昧。そのうち生活リズムが昼夜逆転し、学習意欲のスイッチも完全にオフになってしまいます。このオフモードが入学以降も続くとどうなるか。

  西大和学園では中学入学から6年間、生徒一人ひとりの成績を追跡調査していますが、データを分析してみて、はっきりと分かったことがあります。それは「中学1年の最初の定期テストでのつまずきが6年間続く」ということです。

  最初の定期テストは入学から2カ月後の6月です。このテスト結果が学年のなかでも下位だった生徒は、その後、最初の順位からなかなか浮上できない。傍から見ればちょっとしたつまずきであり、じゅうぶん巻き返せる成績なのに、本人はそれが西大和での自分の実力だと思い込み、勝手に順位を確定させてしまうのです。

  学校説明会ではこのデータも紹介しながら、学習習慣を途切れさせないこと、受験勉強で後回しにしていた家の手伝いや礼儀作法などにも取り組んでおくことなど“魔の75日間”をつくらないためのヒントなども保護者の方にお伝えしています。そのうえで、「学びたい」という意欲のスイッチを自分で押してもらうべく、入学早々のオリエンテーション合宿やたくさんの行事を通して、子どもたちの好奇心や探求心を刺激するのです。

  ● いち早くグローバル教育として 「アメリカ語学研修旅行」も導入

  中学校開校当初の行事で、一番の目玉は「アメリカ語学研修旅行」でした。

  英語の授業では、中学2年生までで中学英語をひと通り終えるカリキュラムを組んでいます。そこで、中学3年生ではアメリカでホームステイを敢行し、しゃべれるかどうか挑戦してみよう、生の英語に触れてみよう。その成果を高校で生かそうという試みです。

  今でこそ、海外への研修旅行やホームステイを実施する中学校も珍しくなくなりましたが、当時は前例が非常に少なく、近畿圏では西大和学園が初めての実施例でした。その意味では、現在さかんに叫ばれているグローバル教育の先取りともいえます。

  第1回目は、6期生が中学3年生に進級したての1990年4月、私も引率として同行し、サンフランシスコへと向かいました。

  この語学研修旅行は、私にとって中学校をつくるときの第一条件でした。若いころの海外放浪の旅で、日本人の英語教育の必要性をいやというほど痛感したからです。

  中高大と英語を学んだので、「英語くらい話せるだろう」と思い込んで旅に出たのですが、相手の言っていることがまるで分からない。ホテルのカウンターで「あなたのルームナンバーは○番です」と言われた、その簡単な英語すら聞き取れないのです。

  「日本の英語教育は間違っているのではないか。読み書きや文法重視で、英会話教育がおろそかになっているのではないか」

  このときに感じた疑問が、西大和学園の英語教育や、アメリカ西海岸でのホームステイプログラムへとつながっていきました。

  実際に、ホームステイを体験した生徒は、わずか10日間ほどにも関わらず、帰国のときには見送りのホストファミリーとペラペラとしゃべっている。その姿を見て、プログラムの成功を確信しました。

  事実、この試みは40年近く経た今も「アメリカグローバル研修プログラム」の名で継続され、多くの西大和学園生がここから国際人としての第一歩を踏み出しています。

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