手軽に無理なく始められるフィットネスで、潜在市場を掘り起こし急成長
2928:RIZAPグループ
代表取締役社長 瀬戸健氏
「結果にコミットする」のコピーで有名となったRIZAPグループ
25年3月期最終損益は3期ぶりの黒字化を計画
──まず、業績の振り返りからお願いします。24年3月期は最終損益が43億円の赤字でしたが、23年3月期の126億7300万円の赤字から大きく改善しました。
chocoZAPが下期に黒字化したことが大きく貢献しました。足もとでchocoZAPを積極的に出店してきましたが、出店をするとマシンをはじめとする店舗コストのほかにも「体組成計」と「ヘルスウォッチ」のスターターキット、宣伝投資などさまざまなコストが発生します。ただ、ほとんどの店舗は半年くらいで単月黒字となるので、既存店率が増加するとchocoZAP事業全体の収益も良くなります。前期はどんどん前倒しで新規出店したので、初期コストも前倒しで発生しましたが、下期は新規出店のペースを抑えて巡航速度にした結果、chocoZAP事業が黒字転換し、全体の業績も改善に向かいました。
──25年3月期は最終利益が20億円と3期ぶりの黒字化を見込んでいますが、牽引役となるのは引き続きchocoZAPでしょうか。
chocoZAPは引き続き前倒しで出店しますので、前半はコストが先行しますが、先ほども申し上げたように既存店率が増加すると収益は改善に向かいます。これに加えてRIZAPの貢献も期待できます。
RIZAPはコロナ禍で非常に大きなダメージを受けましたが、一方でchocoZAPは非対面、非接触で出店を伸ばしました。chocoZAPはフィットネス初心者の方に多く入会していただきましたが、しばらく経つと初心者の方でも、より高い目標を掲げている人がRIZAPに入会するといった相乗効果も出ています。
こうした連携が進むと、テレビCMなどに依存しなくても入会する人が増えてくる好循環も期待できるので販促費を抑える効果も期待できます。chocoZAPの会員数は120万人以上いますから、絶対的な顧客基盤が生きてくるわけです。
足もとでRIZAPの新規入会者に占めるchocoZAPの利用者が20%を超えるまでになってきましたが、将来的にはchocoZAP経由の入会者が半分以上になるよう目指しています。
フィットネス市場の裾野を広げたchocoZAP
──chocoZAPの展開について教えてください。24時間営業で誰でも利用できるという同様のサービスはほかにもあったと思いますがここまで急速に成長してきた要因はどこにあるのでしょうか。
多くの人々を対象としたビジネスであるということが大きいと思います。日本の人口に対するフィットネス参加率は3%台と言われていて、約97%の人はフィットネスを利用していません。これまでのフィットネス業界はその3%の人々に向けたサービスの提供というのが中心でした。
そこで我々はフィットネスを経験したことのない初心者を対象に、誰もが無理なく、簡単に運動に慣れ親しんでいただくということをポイントに置きました。いつもの生活の延長で服を着替える必要も靴を履き替える必要もなく、簡単にどなたでもご利用いただけるというサービスを提供することでフィットネスの裾野を広げてきたことが成長につながっていると思います。
──フィットネス以外にもカラオケなどをchocoZAPで提供しているのはなぜですか。
フィットネスというのは、コロナ禍では不要不急と言われ、更にインフレになってそうした消費は削られつつあります。ただ、それは本当に削っていいのだろうかと私は思っていました。
これは健康とは何だろうということにもつながると思うのですが、WHO憲章でも「健康とは肉体的にも、精神的にも、そして社会的にもすべてが満たされた状態にあること」とあります。日々活動的に動け、ストレスを抱えることなく過ごせ、社会的にもつながっている状態です。
カラオケにしても、ネイルやエステにしても1回行くごとにお金がかかるし、手間もかかります。ただ、「経済的に」とか「時間的に」とかいろいろなハードルでできない人や、やりたくてもやれない人がたくさんいるはずです。そういう人たちに月会費だけの追加料金なしに、気兼ねなく、無理なく始めてもらえる環境を作るというのが、我々の考え方の根底にあります。
──今年5月に47都道府県に出店が終わりましたが、今後の出店ペースはこれにより鈍くなるのでしょうか。
今後も積極的な出店は続ける予定です。例えばchocoZAPの利用者は地方も含めて店舗から1キロ圏内の人が6割を占めている。2キロ圏内になると85%になり、店舗から近い距離から通っていただいていることになる。逆に言うと、これを超えるとなかなかご入会いただけないということです。いくらテレビCMを見て興味を持ってもらっても家の近くにないから通わないという人も多くいらっしゃるのだと思います。
コンビニエンスストアも値段はスーパーの方が安くても通りかかったから行く、家の近くにあるから行くという人が多くいます。chocoZAPも身近で便利がアドバンテージとなっているので、それを考えると、日本全国まだ出店余地は大きい。将来的にはコンビニのレベルの1万店舗の出店を目指しています。
MRIやCTなどの医療提携も
──chocoZAPへの投資額もかなり膨らむことになります。投資額はどれくらいになりますか。
前期と前々期で約370億円、今後3年間で400億円以上の投資を計画しています。また、来期末までに2800店舗の達成を目指しています。
また、特に今期は「ちょこっとサポート・コンシェルジュ」といった人のサポートを増やすことを考えています。chocoZAPは、初心者の方が多く、最近では高齢者の方も増えています。また、新しいサービスも増えているので、使い方がよくわからないといった声も聞かれるようになりました。そうした利用者に対して、人の持っている強みを生かすことで来店の動機付けなどにつながればと考えています。
もちろん、単にアナログ化すればいいと考えているわけではありません。例えばスターターキットなどを活用したデータなどをもとにより効果的、効率的なコミュニケーションを構築することで来店の動機づけや、新しいサービスの案内などのリレーションにつなげています。人とデジタルを融合させていくということが大事だと考えています。
──データベースの活用はどういったものがあるのでしょうか。
例えば、ヘルスウォッチや体組成計などは「結果」の数字しか出てこないので、そこに至った理由がわかりません。ただ、我々にはどんなマシンを何回利用したか、何回来店いただいて、何時間睡眠をとってというデータがあり、食事の写真も撮ってもらっています。そういうヘルスケアの「経過」のデータと「結果」のデータを合わせることで、そこに至った要因という因果関係が解明されることになります。
利用者がどのような結果を望むかによって、その結果を導く要因や因子がわかるので、そこにソリューションが生まれます。我々はそのソリューションを提案すれば良いし、自社で提案できないようであれば専門性を持っているところと連携してソリューションを提案することになります。
──chocoZAPのサービスにMRIやCTなどの検査も加わるとのことですが、それもそうした連携の一環ですか。
医療提携というのは必要不可欠だと考えています。健康にまつわるデータをとることはヘルスウォッチや体組成計でもできますが、重症化に至るようなものは発見できません。健康に関わる企業として取り組むべき分野だと考えています。
例えば会社員の人は年に1回健康診断を受けていますが、自営業の人や主婦(夫)は健康診断を受けていない人も多い。そういった人にもchocoZAPの会員になることで、追加料金なしにしっかり検査を受けていただいて、目で見えない状態を知っていただくことで、安心を与えたり、適切な処置を受けていただくことができるようになります。
確かにコストはかかるかもしれませんが、医師との連携やAIの活用により需要と供給を最適化し検査機器の稼働率を上げることで生産性を上げれば十分に可能です。結果もオンライン上で通知されるので、紙のコストも発生せず、無駄がないので高い生産性を維持できると思います。
東証プライムへの上場を目指す
──「RIZAPグループ」と言えば、かつてはM&A戦略によって短期間で急成長したイメージがある。そうしたグループ会社の現在の状況を教えてください。
例えばワンダーコーポレーションであれば、今はREXTとしてグループの二次流通を担っていますし、インテリア雑貨のBRUNO
実際に買収した当時は、買収のスピードがあまりにも速すぎて、シナジーの形ができるより買収が先行したことは反省材料としています。ただ、企業は常に形を変え続けるものだと考えていますので、それを踏まえて、今のところ具体的な予定はございませんが、今後も買収というのは選択肢の一つではあると思います。
──東証プライムへの上場を明言されました。
過去の積極的なM&Aもあり、管理体制などの充実に一定期間を要するので、これまでは明らかにしてきませんでした。今回はそれをクリアしつつ、3月に立会外分売を行い流動性の基準を満たすなど、一歩ずつ準備を進めています。今回初めてプライム上場の意思を明確にしましたが、関係各所にコンセンサスをとったうえで開示を進めています。
──25年3月期は配当予想を未定としているが、配当に対する考えを聞かせてください。
今期は、成長の踊り場として、品質やお客様満足の向上の投資の時期と考えており、営業利益は63億円の見込みですが、来期は営業利益で300億円、更に再来期には400億円を目指しています。営業利益が黒字化しましたので、それにふさわしい配当を考えています。配当方針としては配当性向20%を掲げています。
◇瀬戸健(せと・たけし)
RIZAPグループ株式会社 代表取締役社長。2003年 健康コーポレーション(現 RIZAPグループ)を起業。その後、パーソナルトレーニングジム「RIZAP」等の事業を手掛け、22年7月より新たにコンビニジム「chocoZAP」を展開。
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